『新しいモビリティ交通制度概要とベンチャーの可能性』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

○新たな交通制度
(1)警察庁発表
4月14日警察庁が有識者に委託検討中の「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」の中間報告において、「近年、技術の進展等により、電動キックボード、自動配送ロボット等の多様なモビリティが登場しており、海外の一部の国では、それらが新たな移動・運送手段として活用され始めている現状にある。また、我が国においても、これらの新たなモビリティの更なる活用を目指して各地で実証実験が行われているところであり」とし、「我が国の既存の交通ルールの下では十分にその性能や利便性を生かすことができない可能性が指摘されている現状にあり、交通ルール等の在り方の見直しを求められている状況にある。」として、新しいモビリティを排除する方向から、積極的に活用して利便性を向上させるべく取り入れる方向に向かうべきという判断がなされた。
ここで新たな交通機関として示されているのは、電動キックボード、セグウエイやシニアカーを含む電動車いす、自動配送ロボットに従来普通免許を必要としてきた原付登録の電動ミニカーなどです。
これは、現在では簡易モビリティーを商品として発表する場合に、「私有地のみ走行可能です。」や、「公道では使用できません。」という重大な制限が解除される可能性があるということになります。これは、新たのなモビリティが、社会としてもっと活用できるよう、交通ルール・自動車登録車両区分に追加される可能性を示しました。

(2)この報告の意味
このような識者検討の報告が中間報告でありながら、大々的に公表される場合の多くは、これは制度改定の予鈴であり、メーカーや自治体はそれに備えて組織人員を用意せよという指示だということです。また、国土交通省や官邸の特区制度度の活動、高齢者の事故削減対策についての警察側からの対応について速やかに回答する必要があったのではという予測ができます。
警察がかじを切った理由としていくつかの可能性が言われています。まず、国土交通省が多額の予算をつけて各地で行ってきた都市交通システム実験が、期間終了後に十分その成果を反映できていないということ。高齢者事故の削減に向けた免許返納運動が、その代替措置を全く考えていないために全く進捗しないで相変わらずアクセルとブレーキの踏み間違いと言った高齢者の事故が無くならないという批判。オートマ免許以来特に提言措置のない免許取得のための費用と期間の拡大のために、新規免許取得者の減少して免許取得者からの寄付で運営されている警察の外郭期間である交通安全協会の安全広報活動に支障が出ていること。また、免許取得者の現象は自動車教習所の減少をもたらし、結果、不適応高齢者の排除のための高齢者講習が円滑に実施できていないことなどが挙げられます。が後何も成果を挙げられないことに疑問がベンチャーが得意とする領域が法的にポジションを得ることになります。

 

○交通制度の概要と可能性
(1)歩行者扱い(時速6km/h未満)
・概要
時速6km/h以下は歩道通行が可能です。現在のセニアカーの基準に合わせたもので、完全に歩行者扱いとなり、路側帯のほか歩道も走ることができます。免許もナンバーもヘルメットもいりません。その上、立ち乗りか座り乗りかの区別も、車椅子以下なら大きさの区分もありません。また、自動荷物配送ロボットも安全性を別途担保した上でこの区分で歩行者扱いとするようです。
・可能性
これは年齢制限がないことから、玩具用途が広がると考えられます。子供でも日常の移動に使用でき、軽車両でもないので、歩行者天国などで速度厳守での公道でレースも可能になります。
(2)自転車扱い(時速15km/h未満)
・概要
時速15km/h以下は小型低速車として、自転車扱いとしています。歩道は走れませんが、路側帯・車道・普通自転車専用通行帯・自転車道は走れます。交通ルールの認識が必要ということで、年齢制限及び講習受講は必要であるが、免許やナンバー登録、ヘルメットも自転車と同様な扱いなる。
・可能性
セグウェイや電動キックボードが対象となり、米国などで各州ごとの基準で多様に使用されているモビリティの輸入販売が拡大できる可能性があります。登録不要からキットや通販での販売も可能であり販売ルートも点検整備ルートの構築必要なく、速やかな展開が期待できます。
(3)原付扱い(時速15km/h以上)
・概要
時速15km/h以上出せるものは原付枠として扱います。車道のみ通行可能でかつ原付免許、ナンバー、ヘルメットが必須です。またヘッドライトやウインカー、ブレーキなどの安全装備も従来どおり必要です。これに従来のミニカーが分類されていることが大きな期待です。
・可能性
かつて一時的ではありますが、原付エンジンを搭載したミニカーが、普通免許を持たない高齢者が実技のない原付免許で自動車が運転できるとしてブームになった事がありました。自転車並みの構造ですので、キットカーとしてエンジンを含んで通販で販売されていたことがあります。これは直ぐ規制され、普通免許対象となって街からミニカーは消えました。それはトヨタのコムスなど現在の電動ミニカーでも同じで、0.6kW以下の原動機を有する一人乗りモビリティは道路運送車両法においては自動車でなく原動機付自転車であるが道交法では普通自動車として扱われています。
これを道交法で原付扱いにすることで、免許取得が簡易化して取得者が増加し、ミニカーの都市交通への適応が促進される可能性があり、企業の配送車、自治体の公共交通代替事業であったものが、個人のセカンドカーや高齢者需要、観光地などのカーシェアリング需要が考えられる。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

記事一覧へ